- 法律
- Vol.32
「東京都カスタマーハラスメント防止条例」 の条文概要
令和6年10月、「東京都カスタマーハラスメント防止条例」が制定され、東京都では令和7年4月より施行されます。近年、顧客等の就業者に対する不当・悪質なクレーム(カスタマーハラスメント)が社会問題となっていることから本条例は制定されました。概要は、次のとおりです。
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1. カスタマーハラスメントの禁止とその定義
本条例で禁止されるカスタマーハラスメントとは、「顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」であるとされています(2条5号)。「著しい迷惑行為」とは、違法な行為及び不当な行為を指すと解されています。
① 違法な行為
暴行、傷害、脅迫、強要、名誉毀損、侮辱、業務妨害、不退去等の犯罪行為がこれに当たります。
② 不当な行為
不当な行為とは、顧客等の申出の内容又は行為の手段・態様が社会通念上相当と認められないものを言います。申出が相当と認められない場合とは、事業者の提供する商品・サービスに瑕疵や過失が認められない場合、申出の内容が事業者の提供する商品・サービスと無関係の場合がこれに当たります。また、行為の手段・態様が社会通念上相当と認められない場合とは、身体的・精神的な攻撃、威圧的・執拗な言動、土下座の要求、拘束的な行動、差別的言動、性的言動、従業員個人への攻撃がこれに当たります。
2. 事業者と就業者の定義(二条一号、二号)
事業者とは、都の区域内(都内)で事業(非営利目的の活動を含みます)を行う法人その他の団体(国の機関を含みます)又は事業を行う場合における個人であるとされています。就業者とは、都内で業務に従事する者を言いますが、都外で事業者の行う事業に関連する業務に従事する者もこれに含まれます。
3. 事業者の責務(九条)
事業者は、就業者がカスタマーハラスメントを受けた場合には、速やかに就業者の安全を確保するとともに、当該行為を行った顧客等に対し、その中止の申入れその他の必要かつ適切な措置を講ずる必要があることが定められました。また、その事業に関して就業者が顧客等としてカスタマーハラスメントを行わないように必要な措置を講ずる努力義務を負うことも定められました。
4. 事業者の措置(十四条)
事業者は、都が作成するカスタマーハラスメント防止指針(11条)に基づき、カスタマーハラスメント防止のための手引の作成その他の措置を講ずる努力義務を負うこと、当該手引を作成した場合には、これを遵守する努力義務を負うことが定められました。
5. 最後に
現時点で違反行為に対する罰則の定めはありません。しかし、就業者に対する安全配慮義務の一環として、今後事業者には、本条例に従った適切な体制の構築が求められると考えられます。
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