- 法律
- Vol.28
廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方の改定について
関連法人:NTS総合弁護士法人
平成25年12月、「経営者保証に関するガイドライン」(本GL)が制定されました。これは、「中小企業・小規模事業者等の経営者による個人保証(経営者保証)には、経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、保証後において経営が窮屈に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因になっているなど、企業の活力を阻害する面もあり、経営者保証の契約時及び履行時等において様々な課題が存在する」ため、次の事項に関する指針を定めたものです。
経営者保証に依存しない融資の一層の促進、経営者保証の契約時の金融機関(対象債権者)の対応、既存の保証契約の適切な見直し、及び保証債務の整理に関する事項などが当たります。
このうち保証債務の整理については、債務整理により保証人となっている経営者個人が被る経済的・信用的なダメージを緩和し、早期に事業のやり直しのためのアクション等を行えるよう従来からの法的倒産手続の手法によらず保証債務の整理が行えるようにするものです。その後、保証債務の整理に関する事項に関し、令和1年12月に、事業承継時に焦点を当てた特則が定められるとともに、令和4年3月に、廃業時に焦点を当てた「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」(以下、基本的考え方)が定められました。
そして、令和5年11月に、基本的考え方について、経営者に退出希望がある場合の早期相談の重要性について、より一層の周知を行っていく観点から、廃業手続に早期に着手することが、保証人の残存資産の増加に資する可能性があることなどを明確化する内容に改定されました。この改定によると、主たる債務者が廃業する場合に、当該手続に早期に着手したことによる保有資産などの劣化防止に伴う回収見込額の増加額について合理的に見積りが可能な場合は、当該回収見込額の増加額を上限として、事業清算後の新たな事業の開始等のため、一定期間の生活費に相当する額や華美でない自宅等も保証人の残存資産に含まれる可能性があることが示されています。
今回の改定により、基本的考え方が、主たる債務者、保証、対象債権者及び保証債務の整理に携わる支援専門家に一層浸透することで、退出希望がある場合の早期相談が促され、円滑な保証債務整理の一助となることが期待されています。
金融庁の発表によると、政府系金融機関においては、新規融資に占める経営者保証に依存しない融資割合が、平成26年度は件数15%、金額22%であったのが、その後徐々に増加していき、令和5年度上期は件数61%、金額74%にまでなっています。他方で、民間金融機関においては、令和3年度で件数30.1%、令和4年度で件数33.2%となっています。近年、高齢化により「事業の最後の閉じ方」をどのようにするか悩んでいる経営者が増えているように思えます。事業承継を行うにしても、廃業をするにしても早めの検討が必要であり、専門家への早期の相談が望まれるところです。
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