- 法律
- Vol.30
共同親権を認める民法改正の概要
改正民法が令和6年5月17日に成立し(同月24日公布)、以前より議論されてきた離婚後の共同親権が初めて導入されました。今回の改正は、父母の離婚が子の養育に与える深刻な影響及び子の養育の在り方の多様化という背景、養育費及び親子交流の取決め率・履行率が低調であるという現状に鑑みて、離婚後も父母双方が適切な形で子を養育する責任を果たせるようにしたものです。その概要について解説します。
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1. 親の責務等に関する規律の新設
父母が子に対して負う責務が明確化されました(子の人格の尊重、父母の互いの人格尊重と協力等)。また、親権が子の利益のために行使されなければならないものであることが明確化されました。
2. 親権・監護等に関する規律の改正
1) 離婚後の親権者に関する規律の見直し
従前は協議離婚の場合に父母の一方を親権者と指定することになっていましたが、今回の改正により、父母の双方を親権者とすることが可能になりました(共同親権)。協議が調わない場合には、裁判所が子の利益の観点から親権者を父母の一方又は双方に指定します。父母双方を親権者とすることで子の利益を害する場合、すなわちDVや子への虐待のおそれがあるケースでは単独親権としなければならないことが定められています。また、親権者変更に当たって協議の経過を考慮することが明確化されました。
2) 親権行使に関する規律の整備
父母双方が親権者であるときは共同行使することとしつつ、①子の利益のために急迫の事情があるとき(DV・虐待からの避難、緊急の場合の医療等)、②監護及び教育に関する日常の行為(子の身の回りの世話等)については、例外的に親権の単独行使が可能であることが明確化されました。また、父母の意見対立を調整するための裁判手続が新設されました。
3. 養育費の履行確保に向けた改正
養育費債権に優先権(先取特権)を付与し、訴訟等をしなくても差押え可能になりました。また、法定養育費制度が導入され、父母の協議等による取決めがない場合にも養育費請求が可能となりました。
4. 親子交流に関する規定の改正
審判・調停前等の親子交流の試行的実施に関する規律、婚姻中別居の場面における親子交流に関する規律、父母以外の親族(祖父母等)と子との交流に関する規律が整備されました。
5. その他の改正
養子縁組後の親権者に関する規律が明確化された他、財産分与の請求期間が2年から5年に伸長されました。
今回主に共同親権が注目されておりますが、養育費に先取特権が付与されたことや法定養育費制度の導入なども画期的な改正であり、今後養育費履行率の上昇に寄与することが期待されます。
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