• 労務
  • Vol.15

長時間労働が疑われる事業場への労働基準監督署の監督指導について

令和2年9月8日、厚生労働省から「長時間労働が疑われる事業場に対する令和元年度の監督指導結果」が公表されました。これは、労働基準監督署が令和元年度(平成31年4月から令和2年3月までの間)に、長時間労働が疑われる32,981事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめたものとなります。

関連法人:NTS総合社会保険労務士法人 NTS丸の内社会保険労務士法人

平成31年4月から令和2年3月までの監督指導結果のポイント
(1)

監督指導の実施事業場:32,981事業場

(2)

主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]
①違法な時間外労働があったもの:15,593事業場(47.3%)
 うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
  月80時間を超えるもの:5,785事業場(37.1%)
  うち、月100時間を超えるもの:3,564事業場(22.9%)
  うち、月150時間を超えるもの:730事業場(4.7%)
  うち、月200時間を超えるもの:136事業場(0.9%)
②賃金不払残業があったもの:2,559事業場(7.8%)
③過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:6,419事業場(19.5%)

(3)

主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]
①過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:15,338事業場(46.5%)
②労働時間の把握が不適正なため指導したもの:6,095事業場(18.5%)

なお、この公表では労働基準監督署の監督指導事例も紹介されています。

例えば、各種情報から時間外・休日労働時間数が1ヵ月当たり80時間を超えていると考えられる中小企業の事業場(製造業)に立入調査を実施した事例です。

労働者19名について、1ヵ月100時間を超える時間外・休日労働(最長:月136時間)が認められた。また、同社より提出された36協定を確認したところ労働者代表について特定の役職者が引き継ぎ、民主的な手続きにより選出されていなかった。

労働基準監督署の対応:時間外・休日労働を月80時間以内とする為の指導、36協定について労働基準法第32条違反とする是正勧告

時間外労働の割増賃金について固定残業代制を採用していたが、実際の時間外労働に対して不足が認められた。

労働基準監督署の対応:実際の時間外労働をもとに法定計算で算定したところ不足が生じていたことから賃金を全額支払っていない労働基準法第37条違反とする是正勧告

36協定は、従業員の労働時間を確認しながら時間外・休日労働できる上限時間を社内で検討し、特別条項付きの新様式に合わせた適正な作成が必要となります。
労働時間の適正な把握は、平成29年1月に策定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」にも定められていますが、勤怠管理システムなど労使も含めて客観的に労働時間等を把握できるものを導入する事で対応可能となります。中小企業の事業者にとっては、厚生労働省の助成金を活用しながら勤怠管理システムを導入する事が可能です。

新型コロナウイルス感染症対策として新しいワークスタイルのテレワークも普及してまいりましたが、テレワーク時の従業員の労働時間管理はこれまでと変わらず必須となりますので、勤怠管理システムの早期導入をお勧めいたします。

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