- 登記
- Vol.32
農地の所有権移転登記について
関連法人:NTS総合司法書士法人
1. 農地法の許可
農地(田、畑など)を売買したり、贈与等をしたりする場合には、農業委員会や都道府県の許可が必要となります。その趣旨は、国内の農業の基盤となる農地を保護する点にあります。
農地を売買する場合、売買代金を支払うだけでは足りず、農地法の許可が得られないと、所有権移転の効力が発生しません(効力発生要件)。そのため、売買代金支払い後に、後日農地法の許可が得られた場合には、農地法の許可到達時に所有権移転の効力が生じます。
2. 農地法第三条の許可
農地法の許可の種類については、農地法に規定があり、農地法第三条は、農地を農地のままで所有権を移転する場合について定めています。農地を農地のままで所有権を移転するため、譲受人は農民や農業法人である必要があります。農地法第三条の許可権者は、農業委員会です。
弊所では太陽光発電用地の所有権移転登記を多く担当しているのですが、たとえばソーラーパネルの下側でシイタケなどを栽培して農地利用を継続する場合があります(営農型)。このような場合は農地法第三条の許可をとって、所有権移転登記をする場合があります。
3. 農地法第四条の許可
農地法第四条は、所持している農地を自分で農地以外に転用する場合について定めています。例たとえば、所持する農地を宅地に変更して自宅を建築する場合などです。
許可権者は、都道府県知事または指定市町村の長になりますが、農地の地積によっては、農林水産大臣と事前に協議することが必要な場合もあります。
4. 農地法第五条の許可
農地法第五条は、農地を宅地などに転用して第三者に移転する場合について定めています。高齢化社会や核家族化に伴い、代々農家を続けていた方が高齢となり後継者がいないために、農地以外の目的で利用したい人に農地を売却する事案が増えてきました。
許可権者は、都道府県知事または指定市町村の長になります。
当社へのご依頼も、農地法第五の許可の場合が圧倒的に多いです。
5. その他
市街化区域にある農地は、事前に届け出ることで、許可を受けなくても農地以外に転用することができます。そのため、農地の所有権を移転するにあたっては、その土地がどのような区域の土地であるのかをあらかじめ農業委員会等に確認する必要があります。また、農地の売買や贈与とは異なり、農地を相続する場合には農地法の許可は不要です。
その他、農地法の許可が不要な例外規定も定められていますが、なじみがある規定は少ないかと思われます。
今回は、農地法の許可について簡単に説明しました。農地法の許可を得る手続きには時間がかかることが多いため、農地の売買や贈与を検討している場合には、十分な準備が必要になります。ご注意ください。
すべての皆様との双方向の「ありがとう」に向けて
あらゆる相談にワンストップで対応
法律、税務・会計、労務など、分野の垣根を越えた幅広いニーズに対応し、企業や個人を取り巻くあらゆる問題についてワンストップで対応したいと考えております。