- 登記
- Vol.28
株式会社の増資による変更登記(現物出資)
関連法人:NTS総合司法書士法人
1. 現物出資とは
前回、株式会社における増資について説明させていただきましたが、通常の金銭出資を想定した内容でした。今回は、現物出資(不動産、動産、会社に対する債権等の出資により株式を発行して資本金を増加させる)について説明させていただきます。
2. 現物出資の手続きについて
現物出資の場合、金銭出資の場合と異なり、出資する財産の評価が難しい側面があります。出資する財産の価値が、発行する株式の価格に相当する価値がない場合には会社資本が空洞化してしまうという問題があります。
そこで、会社法では、現物出資をする場合に、現物出資財産の価額を調査させるために、募集事項の決定後に、発行会社に裁判所に対して検査役の選任の申立てをすることを要求しています(会社法第207条第1項)
ただし、会社法では、以下の事項において、検査役の調査を省略することができる事項について規定しています(会社法第207条第9項各号)。
①募集株式の引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の10分の1を超えない場合
②現物出資財産について定められた価額の総額が500万円を超えない場合
③現物出資財産のうち市場価格のある有価証券の価額が市場価格を超えない場合
④現物出資財産について定められた財産の価額が相当であることについて、弁護士、税理士または公認会計士の証明を受けた場合(ただし、現物出資財産が不動産の場合は、不動産鑑定士の証明も必要となります。
⑤現物出資財産が会社に対する金銭債権であって、当該金銭債権について定められた価額が当該債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合
株主総会で募集事項を決定する必要があることは、前回の金銭出資の場合と同様ですが、現物出資財産の内容についても決定する必要がある点で異なります。
3. 不動産登記の手続きについて
現物出資財産が不動産の場合には、現物出資を原因とする所有権移転登記をする必要があります。登記の際には、不動産評価額の22%の税金(登録免許税)がかかるので、高額な負担となる場合がありますので注意が必要です。
4. まとめ
当方で過去に受任した案件は、いずれも検査役の調査を要しない場合でした。楽器や太陽光発電の権利IDを現物出資する場合や、会社に対する債権を現物出資する事例を扱いました。ただし、現物出資の場合には税務の面でも複雑な問題がありますので、税理士に主導していただく必要があります。
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