- 労務
- Vol.30
「ビジネスと人権」に取り組みましょう
企業における人権対応の必要性
関連法人:NTS総合社会保険労務士法人 NTS丸の内社会保険労務士法人
1. はじめに
近年、「ビジネスと人権」が注目されています。2023年1月発行の「NTSvoice」Vol.24に「ビジネスと人権」の概観を記載しておりますが、2011年の国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下「指導原則」といいます)を契機に、グローバル企業だけでなく、中小企業を含むすべての企業はサプライチェーン全体の人権尊重と人権リスクの回避に取り組むこと(以下「人権対応」といいます)が求められています。今回は、企業における人権対応の必要性について説明します。
2. 人権対応の基本は人を大切にすること
国際的な枠組みにおける人権対応としては、「結社の自由・団体交渉権の承認」「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「差別の撤廃」「労働安全衛生」の分野があげられます。その多くは日本企業にとってはどこか遠い話のように感じてしまいそうですが、実は身近な問題である「長時間労働」「ハラスメント」「ジェンダー」も配慮すべき人権リスクの一部です。
企業における人権対応は、特別なことばかりが求められているわけでなく、従業員や利害関係者など、企業とつながるすべての人々の尊厳を守ること、人を大切にすることが基本なのです。
3. 消費者や投資家による企業への期待の高まり
消費者の環境問題や社会問題への関心が高まっており、人権や労働環境に配慮した商品やサービスを選ぶ傾向にあります。また、インターネットの普及等により、消費者が企業活動に関する情報に容易にアクセスできるようになったことで、企業が真に倫理的な経営を行っているかどうか、企業の言動を厳しくチェックするようにもなっています。消費者は単に商品やサービスの品質や価格だけでなく、企業の倫理観や社会貢献活動なども重視するようになりました。
そのほか、世界の株式市場においてESG投資が広く浸透していますが、責任投資原則(PRI)はESG投資の「S(社会)」の主要な要素の一つとして人権を位置付けており、人権をESGの核とする方針を表明しています。さらに企業の人権対応をスコア化し、格付けして公開する機関が複数登場しており、そのスコアが消費者や投資家、就活学生等の判断材料になっています。人権対応が企業イメージや売り上げの増減、資金調達や株式、取引関係等に大きく影響しており、企業価値を決めていることが分かります。
4. 各国で進む法制化
指導原則の策定を機に、欧米を中心に企業の人権対応を法制化する動きが進んでいます。これにより、各国の法令・指令が直接適用される一定の日本企業や現地子会社だけでなく、直接適用を受けない日本企業においても取引先企業のサプライチェーンとして対応を求められる可能性があります。
日本では、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」等、ソフトローの形で人権対応を求めていますが、近時、公共調達の入札要件に人権対応が含まれたり、取引先等に人権対応を定める条項を含んだ契約を求める企業が増加しており、今後、日本国内においても実質的な義務化が進んでいく可能性は十分に考えられます。
5. まとめ
企業における人権対応は、必ずしも難しい問題ばかりではないのですが、対応しない企業は社会的に認められず、サプライチェーンから排除されてしまう可能性があります。企業の関わるすべての人々の人権が侵害されるリスクを事前に回避することが、企業の持続的な成長を実現するためには不可欠です。
当法人では、専門家ならではの視点で「ビジネスと人権」への取り組みをご支援いたします。お困りごとがありましたら一度ご相談ください。
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