- 労務
- Vol.28
年収の壁・支援パッケージについて
関連法人:NTS 総合社会保険労務士法人 NTS丸の内社会保険労務士法人
社会保険における年収の壁とは
年間収入が一定金額を超えると扶養から外れ社会保険料の負担が生じることをいわゆる「年収の壁」といい、現在、「106万円の壁」(社会保険の加入義務が発生)と「130万円の壁」(国民年金・国民健康保険の保険料の負担が発生)が存在する制度設計になっています。人手不足への対応が急務となる中、短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援するため、政府の当面の対応として「支援強化パッケージ」が発表されました。大要は次のとおりです。
「106万円の壁」への対応
パート・アルバイトで働く方の、厚生年金や健康保険の加入に併せて、手取り収入を減らさない取組(※)を実施する企業に対し、労働者1人当たり最大50万円の支援をします。
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・社会保険適用促進手当を支給
(社会保険料の算定対象外)
・賃上げによる基本給の増額
・所定労働時間の延長
企業への支援【キヤリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」
労働者本人負担分の保険料相当額の手当支給や賃上げなどにより、壁を意識せず働ける環境づくりを行う企業を後押しするコースの新設。
(1)手当等支給メニュー
要件 | 1人当たり助成額 |
---|---|
①賃金の15%以上追加支給 (社会保険適用促進手当) |
1年目 20万円 |
②賃金の15%以上追加支給 (社会保険適用促進手当) 3年目以降、③の取組を行う |
2年目 20万円 |
③賃金の18%以上を増額 | 3年目 10万円 |
(2)労働時間延長メニュー
週所定労働時間の延長 | 賃金の増額 | 1人当たり助成額 |
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4時間以上 | ― | 30万円 |
3時間以上 4時間未満 |
5%以上 | |
2時間以上 3時間未満 |
10%以上 | |
1時間以上 2時間未満 |
15%以上 |
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助成額は中小企業の場合。大企業の場合は3/4の額
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1年目に(1)の取組による助成(20万円)を受けた後、2年目に(2)の取組による助成(30万円)を受けることが可能。
社会保険適用促進手当
事業主が被用者保険適用に伴い手取り収入を減らさないよう手当を支給した場合は、本人負担分の保険料相当額を上限として社会保険料の算定対象としません。
〈活用イメージ〉時給が上がり(年収104万→106万円)厚生年金・健康保険に加入した場合

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保険料は、厚生年金、健康保険(協会けんぽ)等の保険料率で計算した場合の労働者本人の負担額。
なお、手取り収入は税金については考慮していない。
「130万円の壁」への対応
パート・アルバイトで働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き被扶養者認定が可能となる仕組みを作ります。
事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
(例)毎月10万円で働くパートの方が残業により一時的に収入増になった場合

配偶者手当への対応
企業の配偶者手当の見直しが進むよう、
見直しの手順をフローチャートで示す等わかりやすい資料を作成・公表しました。
例えば、「106万円の壁」の対応として、2023年10月以降に短時間労働者が社会保険の対象となった場合に、手取り額の減少を補填するために賃金の15%以上を社会保険適用促進手当として支給した場合、労働者1人当たり最大50万円のキャリアアップ助成金が支給されます。この社会保険適用促進手当は、本人負担分の保険料額を上限額として、社会保険料の算定基礎に考慮しないことができます(最大2年間の措置)。
また、「130万円の壁」への対応としては、短時間労働者が、繁忙期などで一時的に収入が上がっても、事業主が証明書を提出することで、引き続き扶養に入ることが可能となります。
「配偶者手当」に関しては、収入要件の存在が就業調整の要因となっています。その見直しに向けては、厚生労働省のウェブサイトに『「配偶者手当」の在り方の検討に向けて~配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項~ (実務資料編)令和5年1月改定版』が提示されておりますので、必要に応じて検討を進めましょう。
この「年収の壁・支援強化パッケージ」を活用することで、事業所は人手不足の解消、労働者は「年収の壁」を意識せずに働くことができ、社会保険に加入することで処遇の改善を実現することができます。
「年収の壁・支援強化パッケージ」について、ご不明な点がございましたら、お気軽に当法人までご相談下さい。
すべての皆様との双方向の「ありがとう」に向けて
あらゆる相談にワンストップで対応
法律、税務・会計、労務など、分野の垣根を越えた幅広いニーズに対応し、企業や個人を取り巻くあらゆる問題についてワンストップで対応したいと考えております。