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  • Vol.27

最高裁による定年後再雇用と正社員の賃金格差の判断について

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令和5年7月20日、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」第9条1項2号所定の、継続雇用制度により雇用された有期契約労働者(定年退職後の嘱託職員)と無期契約労働者(正職員)との間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違(賃金格差)について、初めて最高裁判所の判断が示されました(最一判令和5年7月20日)。

原審では、定年退職後の再雇用時労働条件の月額基本給や退職金が、定年退職前の約60%超も減額した点について、「正職員の基本給に勤続年数に応じて増加する年功的性格があることから、金額が抑制される傾向にある勤続短期正職員の基本給及び賞与の額をも下回っている」と評価認定されており、労働条件の相違のうち、定年退職時の基本給及び一時金の60%に下回る部分は、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると判示されました。

これに対し、上告審である本判決(最高裁)では、「有期契約労働者に対する退職金・賞与の不支給と労契法20条の不合理性について」の最三判令和2年10月13日民集74巻7号1901頁を引用し、同判決が示した判断枠組みを用いて、「基本給の性質やこれを支給する目的及び労使交渉に関する事情を適切に評価していない原審判断には、解釈適用を誤った違法がある」と判示し、原審に破棄差戻ししました。

原審では、基本給を「年功的性格」と評価しましたが、最高裁は、勤続給のほか「職務給」としての性質をも有する余地があるとし、さらに手当部分は「職能給」としての性質を有する余地もあると判示しており、より分析的な検討が必要であることを示していると思われます。
令和2年に最高裁判決が示された際に、労働条件格差の再点検を行った事業者の方も多いと思われますが、本判決を機に、正規雇用(正社員)/非正規雇用(有期契約労働者)の労働条件についても再点検・是正することが望まれると言えます。

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