- 法律
- Vol.23
株主総会のデジタル化について
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1. はじめに
コロナ禍においてリモートワークが推進された結果、対面方式の会議が減り、ウェブ会議やTV会議を利用する機会の増加など、それぞれの会社において効率的なコミュニケーションのために、さまざまなツールが活用されていると思います。
今回は、株式会社では必ず毎年開催しなければならない(正確には「毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」)株主総会を取り上げ、リモートでの株主総会、すなわちバーチャル株主総会の意義や法的問題点をご紹介いたします。
2. バーチャル株主総会とは
これまでにも、現地で株主総会に出席できない株主のために、さまざまな法制度の拡充や実務上の工夫がなされてきました。たとえば、書面投票による議決権の行使に加えて、電磁的方法によって議決権を行使する方法などです。もっとも、株主総会を物理的な場所で開催することは必須とされていました。そのため、株主総会を物理的に開催し、会場の様子をインターネットで中継する方法を採用している会社もありました。
2021年の産業競争力強化法の改正により、会社法の特例として、場所の定めのない株主総会が可能となりました。これにより、物理的な会場を用意するコストを削減し、株主や役員が一堂に会する必要のない、「バーチャルオンリー株主総会(バーチャル株主総会)」ができるようになりました。
3. バーチャル株主総会が可能となる要件
もっとも、バーチャル株主総会はどのような会社でも実施できるわけではなく、所定の要件を充足する必要があります。たとえば、下記のようなことです。
①上場会社であること
②場所の定めのない株主総会ができる旨の定款の定めがあること
③経済産業大臣及び法務大臣の「確認」を受けていること
③に記載してある大臣の「確認」を受けるには、「通信の方法に関する事務の責任者の設置」「通信障害に関する対策方針」「インターネットを使用することに支障のある株主の利益確保に関する配慮方針」「株主名簿に記載・記録されている株主の数が100人以上であること」について、所定の申請書と添付資料を提出する必要があります。
4. バーチャル株主総会の法的問題点
上記の、大臣の「確認」を受けるための要件からも読み取れるとおり、通信障害や、インターネットを利用することに支障のある株主の存在が、バーチャル株主総会のリスクであるといえます。
通信障害のために株主が総会の審議や決議に参加できなかった場合、手続に瑕疵があるとして決議取消しの訴えが提起されたり、有効な決議が存在しないと評価されたりするおそれがあります。そのようなリスクに備える方法として、
①通信障害に関する対策に資する措置が講じられたシステムを用いる
②通信障害が生じた場合の代替手段の用意
③通信障害が生じた場合に関する具体的な対処マニュアルの作成
④総会にて延期・続行の決議を諮る
等の対応が挙げられています。
5. 今後の株主総会
バーチャル株主総会にはリスクもありますが、デジタル化の推進に伴い、実施する会社が増えていくのではないかと思います。また、これまでは株主総会の招集通知(資料)は書面で郵送されていましたが、会社法の改正に伴って、上場会社では、2023年3月以降に開催される株主総会から、電子提供制度(株主総会資料はウェブサイトにアクセスして確認する制度)が導入されることになっています。
対面(リアル)のコミュニケーションの重要性を否定するわけではありませんが、株主総会のデジタル化には、会社・株主にとっての利便性の向上や環境負荷の低減といった意義があり、積極的に検討する価値があるといえます。
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