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  • Vol.22

改正公益通報者保護法について

6月1日から 「改正公益通報者保護法」が施行されました。

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2000年代初めごろ、企業の不祥事が相次いで発覚しました。そして、そのきっかけの多くが事業者内部の関係者からの通報であったことから、内部通報の重要性が認識されました。

しかしながら、労働者による通報が社会にとって有益である一方、通報を行ったことを理由として、事業者が労働者を不利益に扱うことが可能でした。なぜなら、労働契約における使用者は労働者に対して、
①その労務の提供に関して指揮命令権を有する
②就業規則においては労働者の秘密保持義務等が規定されていることが多いことから、これらを根拠として、通報を行った労働者に対して解雇、懲戒その他の不利益な取り扱いが行われる恐れがあったからです。そこで、2004年に公益通報者保護法が制定され、通報者の保護を図ることにしました。

その後、関係法令の改正があったほか、実態として、公益通報者保護制度が適切に機能しなかった事例があったため、今回の改正となりました。

改正の主な内容としては、
①退職者と役員を公益通報の主体として追加
②通報対象事実の拡充
③公益通報者が保護を受けるための要件緩和
④公益通報を理由とする公益通報者の損害賠償義務の免責の明示
⑤事業者及び行政機関における通報体制整備義務の新設
⑥事業者における公益通報窓口担当者の守秘義務の新設
が挙げられます。

本稿では事業者の義務に絞って、事業者における通報体制整備義務の新設、事業者における公益通報窓口担当者の守秘義務の新設について解説します。

1. 事業者における通報体制整備義務の新設

旧法では、事業者の義務はほとんど定められておらず、消費者庁の制定したガイドラインに基づき、事業者の自主的な取り組みが図られてきました。その結果として、旧法下においても大規模な事業者の多くは内部通報体制を整備した一方で、一部の事業者においては、体制整備がされていない実態がありました。

そこで新法では、事業者の義務として公益通報対応業務従事者、すなわち「公益通報を受け、並びに当該公益通報に係る通報対象事実の調査をし、及びその是正に必要な措置をとる業務に従事する者」を定めることを含む、公益通報に対応するための適切な体制を整備すべきことを規定しました(新法11条1項及び2項)。もっとも、小規模な事業者にもこの業務を課すことは現実的でないことから、常時使用する労働者が300人以下の事業者については、努力義務にとどめられています(新法11条3項)。

なお、整備すべき体制については、指針が定められることとなっています(新法11条4項)。体制整備義務は、内閣総理大臣の指導、勧告等の対象であり(新法15条)、常時使用する労働者が300人を超える事業者については、体制整備義務を遵守せず、内閣総理大臣の勧告にも従わない場合には、その旨が公表されることになっています(新法16条)。

2. 事業者における公益通報窓口担当者の守秘義務の新設

通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合の通報(いわゆる1号通報)は、事業者にとって不正行為が公になる前に是正する機会を得られる点で有益です。しかしその反面、通報者からみれば、自身が通報を行ったことによる不利益取り扱いを受けるおそれが大きいといえます。よって、内部通報を促進するためには、公益通報者が特定されないことを確保する必要があります。

そこで、改正法は公益通報対応従事者について、公益通報者を特定させる事項についての守秘義務を設けました(新法12条)。この守秘義務違反には罰金刑が科されることとなっています(新法21条)。
あわせて、改正公益通報者保護法施行に際し、消費者庁より指針やガイドラインが発表されています。貴社の公益通報者保護制度が改正法に反していないか、指針やガイドラインを基に確認してみてはいかがでしょうか。

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