- 登記
- Vol.21
抵当権と根抵当権について
関連法人:NTS総合司法書士法人
1. 抵当権と根抵当権
抵当権とは、債務者又は第三者が債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の弁済をうける権利をいいます(民法第369条)。皆様も住宅ローンで抵当権を設定することがあるので、イメージがつくと思います。
他方で、根抵当権とは、継続的取引関係で生じる不特定の債権を担保するため、あらかじめ極度額を定めて設定する抵当権です(民法第398条の2)。
継続的取引関係の当事者間では、お金を借りたり弁済したりすることが多数あるため、その度にいちいち抵当権を設定したり抹消したりするのは煩雑で費用もかかるので、あらかじめ債権の範囲(例えば、銀行取引、売買取引といった具合に登記簿に記載します)を定めて、その債権の範囲に属する取引から生じる債権を担保します。建物を新築する場合には、着手金、中間金、完成時にお金を支払うといった具合で分割して工事費用を支払う契約になっていることが多く、その場合に根抵当権が利用されることが多いです。抵当権は、債権が完済されれば抵当権も消滅しますが(付従性)、根抵当権は、債権が完済されても根抵当権は消滅しません(付従性なし)。
2. 抵当権と根抵当権の譲渡
抵当権については、被担保債権(住宅ローンでいう貸金債権)が譲渡されると、抵当権も一緒に譲渡されたことになります(随伴性)。
これに対して、根抵当権については、被担保債権が譲渡されても、元本確定前ならば、債務者の承諾がない限り根抵当権は移転しません(随伴性なし)。
3. 根抵当権特有の「元本確定」制度
先述のとおり、根抵当権には付従性が無いので、極度額を弁済したとしても根抵当権が消滅するものではありません。そのため、当事者で合意解除することで根抵当権を消滅させることはできますが、債務者が弁済して根抵当権を消滅させたい場合には、元本を確定することが必要になります。債務者は、根抵当権設定時から3年を経過したときに元本確定を請求することができます。元本が確定すれば、根抵当権は抵当権と同じ性質となります。元本が確定する事由は、民法にさまざま規定されています(民法第398条の8以下)。
4. 具体的場面
当方では、債権譲渡に伴う(根)抵当権移転登記を多く担当させていただいています。抵当権移転の場合にはそれほど気を使うものではないのですが、根抵当権移転の場合は、随伴性との関係で、元本が確定しなければ債権譲渡で移転することができないため、元本が確定しているかを常に気を配る必要があります。
譲渡人(現債権者)から元本確定請求通知を債務者宛に内容証明郵便で発行してもらったり、元本確定の合意をしてもらうことをお願いしたりすることも多いので、手間を要します。
すべての皆様との双方向の「ありがとう」に向けて
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