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- Vol.20
遺言制度について
平成30年11月発行のvol.7で「自筆証書遺言」に関する法律改正について紹介させていただきましたが、ここのところ遺言に関する相談が増えてきたので、改めて2つの遺言制度を比較させていただきます。
遺言については、船や飛行機の遭難時に緊急的に口述で遺言を残す場合など特殊な遺言に関する規定が民法第979条に定められていますが、一般的には、「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」が大部分を占めています。
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1. 自筆証書遺言
「自筆証書遺言」は、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、押印した遺言です。特にどこかに赴いて作成する必要がないので、遺言者が好きなタイミングで作成することができます。ただし、専門家を介さない場合も多いので、遺言書の内容が要件をそもそも充たさない場合も少なくありません。
また、遺言書として有効に使用するためには、遺言者が亡くなった後に、家庭裁判所で「検認」という手続きを経る必要があります。検認手続きとは、家庭裁判所に「検認申立て」をしたうえで、指定日に相続人が家庭裁判所に集まり、遺言書の確認をするものです。検認申立てや出席義務はないものの、相続人が家庭裁判所に集まることが求められるので、相続人にそれなりに負担がかかります。
このようなデメリットを緩和する方法が、以前紹介した「法務局による自筆証書遺言書保管制度」です。
遺言者本人が自筆した遺言書及び必要書類を準備して、自ら管轄法務局に出向き、本人確認を受けた後、原本と画像データを預かってもらうものです。法務局で審査がなされることから、要件を充たさない遺言書が作成されるリスクは少ないかと思われます。また、この手続きによる場合、家庭裁判所で遺言書の検認手続きをする必要はなく、法務局から相続人へ通知されたら相続人が法務局に赴くだけなので、相続人への負担も少ないです。
2. 公正証書遺言
「公正証書遺言」は、遺言者が公証人を介して証人立会いの下で公正証書化する遺言書です。
公証人による遺言書の事前チェックがあることから、遺言書の内容が要件を充たさないことはほとんどないと思われます。また、遺言者と親族関係に無い証人2人の立会いが必要であることから、遺言者の真意に基づき適正な手続きで行われたことが担保されているといえます。
このような厳格な手続きがとられることから、「法務局による自筆証書遺言書保管制度」の場合と同様、家庭裁判所の検認手続きが不要です。
ただし、公証人への費用を一定額支払う必要があるとともに、証人2人を確保しないといけないことから、自筆証書遺言を作成するより費用も手間もかかるものとなっています。
3. どの制度を利用すべきか
どの制度を利用すべきかは、その時の状況によると思います。専門家の立場からは、準備に時間的余裕があり確実性を重視したいならば「公正証書遺言」を、急ぎの状況下やコロナ禍で外出しづらい状況では「自筆証書遺言」を勧めます。
いずれにしても、遺言書作成には専門知識が要求されるので、作成をしたい方は是非一度当方までご相談ください。
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