- 登記
- Vol.19
所在不明株主の株式の取得について
関連法人:NTS総合司法書士法人
1. 所在不明株主とは
所在不明株主とは、株主名簿に記載されてはいるが、会社と連絡が取れなくなり、所在が不明となっている株主をいいます。所在不明株主がいると、たとえば会社の事業承継を進めたい場合に、株主総会決議などの手続きを進めることができないといった問題が発生します。
2. 従来の制度
従来の会社法では、所在不明株主に対して行う通知などが5年以上継続して到達せず、かつ、その株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しない場合に、その保有株式を競売又は売却することを認めています(会社法第197条以下)。もっとも、競売は費用も時間もかかるので、非上場株式については裁判所の許可を得て売却することが一般的かと思われます。
売却の具体的な手続きの流れは、以下のようになります。
【所在不明株主の保有株売却までの流れ】
①5年以上株主に通知が不到達・配当を受領していないことを確認する
②取締役会設置会社は株式買取に関する事項について取締役会で決議する
③利害関係人に異議を述べる機会を与えるため一定期間を定めて公告し、所在不明株主に対して個別催告をする
④裁判所の売却許可を得る
⑤株式を売却する(自社で株式を買い取ることも可能)
従来の制度は5年間という長い期間の所在不明が要件となっており、それが手続きをしにくい点となっておりました。
3. 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」による会社法の特例
今年8月に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が改正され、一定の要件の下で、都道府県知事の認定をうけることにより、前述の5年を1年に短縮する会社法の特例が認められることになりました。
特例として認められるのに必要な要件は以下の4つです。
ⅰ)上場会社等以外の中小企業者である株式会社であること
ⅱ)代表者が年齢や健康状態により、継続的かつ安定的に経営を行うことが困難であるため会社の事業活動の継続に困難が生じていること
ⅲ)一部株主の所在が不明であることにより、その経営を代表者以外の者に円滑に承継させることが困難であること
ⅳ)都道府県知事の認定を受けること
また、具体的な所在不明株主の株式の取得手続きの流れとして、前述した従来の手続きと異なる点は、以下の2点です。
①1年以上の通知不到達・配当不受領の場合で足りること
②特例措置によることを明示した公告・個別催告をしたうえで、会社法上の公告及び個別催告をする必要があること(公告・催告を二重に行う必要がある)
公告・個別催告を二重に行う必要がある点で費用はかさみますが、通知不到達・配当不受領が5年から1年に短縮されている点で、従来よりも所在不明株主の株式の取得をすることが円滑になると思います。
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