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  • Vol.18

家族信託制度について②

関連法人:NTS総合司法書士法人

1. 遺言代用信託

前回は家族信託制度について任意後見制度との比較の観点から説明させていただきました。今回は、遺言代用信託について説明させていただきます。遺言代用信託とは、文字通り「遺言の代わりになる信託契約」を指します。具体的には、委託者(被相続人)の死亡を効力発生条件として、信託契約により、受託者が遺産を受益者(主として相続人)のために信託契約に従って管理・運用する制度です。

2. 遺言との比較

遺言書は相続財産を被相続人の意思に従って相続させる有用な制度です。しかし、例えば子供がいない夫婦において、夫が、妻が亡くなるまでは妻に自宅で暮らしてほしいが、妻が亡くなった後には自分の弟に自宅を引き継ぎたい、と思っている場合、通常の遺言では対処できません。なぜなら、遺言により夫から妻に自宅が相続されると、その自宅は妻の固有財産となるため、その後に妻が亡くなった時には「妻の相続人」が相続すべき財産となるため、夫の弟は相続人とならないためです。夫の遺言だけでは、亡き夫の弟は、夫の自宅を最終的に相続できないことになります。

これに対して、信託契約によるならば、夫は、「自分の死後は妻(第一受益者)に自宅で暮らしてもらい、妻が亡くなった場合には弟(第二受益者)が自宅に暮らす」という内容の信託契約を締結し、そのような契約の執行を弟(受託者)に任せることができます。これにより、夫が生前に信託契約を弟と締結することにより、妻の居住権を確保しつつ、最終的に夫の一族である弟に自宅を引き継ぐことができることとなります。

つまり、遺言では、夫が死亡した第一相続の後に生じる妻の死亡による相続(数時相続)には対応できないが、信託契約によるならば、このような数次相続についても対応できることとなります。その意味で、信託契約による場合、柔軟に相続財産の承継を行うことができるものといえます。

3. 家族信託契約を締結するための手続き

信託契約を締結するためには、委託者(主として被相続人)と受託者が公証役場に赴き、公正証書に署名押印する手続きが必要となります。これにより、信託契約が公正証書化されます。
信託契約が公正証書化されると、不動産については信託登記申請により受託者名義に信託登記がなされ、預貯金は信託用の受託者名義の口座を開設したうえで信託財産が受託者に託されることとなります。

家族信託契約を締結する場合、契約は比較的長期間にわたることや、委託者個々の財産状況によってふさわしい契約内容が異なることから、専門家への相談が不可欠なものといえます。そのため、専門家主導で信託契約書の作成及び契約の締結を進めることが有用です。信託契約にご興味がある方は、是非一度当方までご相談ください。

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