- 法律
- Vol.19
令和元年改正会社法における D&O保険の取り扱いについて
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1. D&O(Directors&Officers)保険とは
D&O保険(役員等賠償責任保険)とは、役員等の業務遂行に関して損害賠償請求を受け損害が生じた場合に保険金が支払われる損害保険です。
役員は、会社との間で委任契約の関係にあるため、その契約関係上守るべき注意義務に反し会社に損害を与えた場合、株主から代表訴訟を提起されるというリスクがあります。
また、第三者との関係でも任務懈怠に基づく損害賠償請求を起こされる可能性があります。
これらの損害賠償請求は高額になることが多いため、役員が過度にリスクを恐れることで経営が委縮してしまうという問題があります。
そのため、そうした訴訟リスクに備え、優秀な人材の確保に資するという意義から、万が一に備えるD&O保険が実務上広く普及しています。
2. D&O保険の会社法上の問題点
先述のとおり、D&O保険には有用な意義があります。しかし一方で、その内容によっては役員の職務の適正性が図れなくなる恐れがある他、会社が役員を被保険者とする保険契約を締結する場合、会社法上の利益相反取引に該当する可能性がありました。
そこで令和元年会社法改正では、D&O保険契約を締結する場合に必要な手続きと情報の開示に関する手続きを整備しました。
3. 令和元年会社法改正におけるD&O保険の規定について
(1)必要な手続き
会社がD&O保険契約の内容を決定するには、株主総会で決議を得る(取締役会設置会社にあっては取締役会決議)ことが必要になります。
(2)会社法上の利益相反取引の規制について
取締役又は執行役を被保険者とするものについては、会社法上の利益相反取引の規制は適用されません。また、民法上の自己契約及び双方代理による無権代理行為ともなりません。
なお、令和元年の会社法で改正された本手続きを踏むことで、D&O保険の保険料を全額会社が負担することも可能であり、税法上も保険料負担部分について役員個人への給与課税は不要とされています。
(3)情報開示について
公開会社は、「役員等損害賠償責任保険契約に関する事項」を事業報告の内容に含める必要があります。
事業報告に記載する具体的な内容は、保険契約の被保険者の範囲や、保険契約の内容の概要等です。
また、取締役等の選任に関する議案を株主総会に提出する際の参考書類に、「役員等損害賠償責任保険契約の内容の概要」を記載することが必要となります。
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