- 登記
- Vol.17
家族信託制度について①
関連法人:NTS総合司法書士法人
1. 総論
「信託」とは、自分の財産を、信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って管理・運用してもらうことをいいます。
皆様も信託銀行とか投資信託という言葉を耳にしたことがあると思います。これらは「商事信託」と言われ、信託銀行や信託会社が受託者として、営利目的で財産の管理・運用を行うものです。
一方、「民事信託」は、受託者は誰でもなれますが、営利を目的とせずに財産の管理・運用を行うものです。民事信託のうち、家族間で行う信託を特に「家族信託」と呼びます。
2. 家族信託の場面
家族信託を理解するにあたり、わかりやすい例をあげてみたいと思います。
高齢者の父が所有するアパートがあり、息子が一人いるとします。もし、父が認知症になってしまった場合、アパートを管理・運用することができなくなってしまいます。そういったリスクに備えて、あらかじめ父と息子との間で信託契約を締結して、父が息子にアパート管理を委託し、回収した家賃を受益者と定めた父に送金することにします。
要するに、家族信託では、「委託者(父)」、「受託者(息子)」、「受益者(父)」という三者を信託契約で定めて、「委託者」が定めた目的に従って、「受託者」が財産を管理・運用することとなります。
3. 任意後見制度との比較
認知症のリスクに備える制度としては、以前、「任意後見制度」について説明いたしました。任意後見制度は、元気なうちに、将来精神上の障害が発症する場合に備えてあらかじめ自分の後見人になる者を選任しておく契約のことをいいますが、認知症のリスクに備えて「元気なうちに契約を締結する」点で、家族信託と似ています。
しかし、任意後見制度よりも、家族信託の方がより大きな柔軟性があります。任意後見制度では、例えば被後見人の居住不動産を売却する場合には家庭裁判所の許可が必要になるなど、財産の処分に時間と手間がかかります。これに対して、家族信託では、信託契約の内容に従えば、受託者が委託者の不動産を売却することができます。
また、任意後見制度は被後見人本人を保護するための制度であるので、本人の財産を売却して投資信託を購入するというような投資運用をすることはできません。これに対して、家族信託では、信託契約の内容として受託者に投資運用の権限を与えれば、受託者が委託者のために投資運用することも可能です。
要は信託契約の内容を比較的自由に定めることができるので、柔軟な対応が可能となります。
4. まとめ
以上、家族信託の一場面として認知症対策をあげましたが、家族信託はとても柔軟な制度で、いろいろな場面で活用することができます。次回では、違う場面での家族信託の活用を紹介させていただきます。
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