• 法律
  • Vol.12

会社法の改正について

先の臨時国会で改正会社法が成立しました。改正内容は、大きく①取締役等に関する規律の見直し②株主総会に関する規律の見直し③社債の管理等に関する規律の見直しの3本柱からなっています。今回は、①取締役等に関する規律の見直しの一部について説明します。

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1. 取締役の報酬等に関する規律の見直し

旧法では、取締役の報酬等に関する規律は、「お手盛り防止」という観点からのみ規律されていました。しかし、取締役の個人別の報酬の内容は、取締役会や代表取締役が決定していることが多く、取締役等の報酬は、取締役等に対し、適切な職務執行のインセンティブを付与する手段となり得ます。そのためこれを適切に機能させるとともに、決定手続を透明化する必要があることが指摘されていました。

そこで改正法では、上場会社等において取締役との個人別の報酬の内容が株主総会で決定されない場合、取締役会はその決定方針を定め、その概要等を開示しなければならないと規定されました。

また、取締役等の報酬として株式等を付与する場合、株主総会の決議事項に株式等の数の上限等も加えるとともに、株式を発行する場合には出資の履行(金銭の払込み等)を要しないと規定されました。
さらに公開会社については、事業報告の際、取締役等の報酬に関する情報の開示を充実させる規定も設けられました。

2. 会社補償に関する規律の整備

役員等の責任を追及する訴えが提起された際に、株式会社がその費用や賠償金の補償すること(以下、まとめて「会社補償」といいます)は、利益相反性があるため、旧法では会社補償について直接定めた規定はありませんでした。
しかし近年はコーポレートガバナンス(企業統治)の強化等により株主代表訴訟が増えています。役員等が訴訟に巻き込まれれば弁護士費用や損害賠償金が必要になるため、会社補償の規定の未整備が、役員等が積極的な経営に踏み切れない一因になっているとの指摘がありました。

そこで改正法では、役員等個人の負担軽減を法律で裏付け、積極的な経営を後押しするために、株式会社が会社補償をするために必要な手続規定や会社補償をすることができる費用等の範囲についての規定が新設されました。具体的には、株式会社と役員等が結ぶ補償契約については、取締役会か株主総会の決議を求めるとされ、補償の概要は事業報告で開示しなければならないと規定されています。また、役員等に故意や重大な過失があった場合は補償の対象外とされています。

さらに、株式会社が役員等を被保険者とする会社役員賠償責任保険(いわゆるD&O保険)に加入することについても、利益相反性があるため、旧法ではD&O保険への加入について直接定めた規律はありませんでしたが、役員等を取り巻く上記のような環境を踏まえ、D&O保険に加入するために必要な手続規定等が新設されました。
こうした規定が新設され、会社補償等が法的に裏付けられることにより、優秀な人材を確保しやすくなることが期待されています。

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