- 法律
- Vol.11
相続法の改正について(2)
前回に引き続き、2019年7月1日から施行された改正相続法の概要について説明します。
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1. 遺言制度に関する改正
自筆証書遺言は、改正前の相続法では「全文、日付及び署名を自署し、これに印を押さなければならない」と規定されていました。そのため、特に相続財産が多数・多岐に渡る場合、財産目録も自筆で記載する必要があり、相当な負担がかかりました。
そうした負担を解消するため、改正相続法では、自筆証書にパソコン等で作成した目録や銀行通帳のコピー、登記事項証明書等を目録として添付する形で、遺言書の作成ができるようになりました。なお、偽造防止のため、財産目録には署名押印をしなければなりません。
2. 相続開始後の共同相続人による財産処分について
相続開始後、共同相続人の一人が遺産に属する財産を処分した場合、計算上、不公平が生じることがありました。改正相続法では、この不公平を是正する施策が設けられました。例えば、特別受益がある相続人が遺産分割前に遺産を処分した場合、処分した財産は遺産ではなくなることに加え、民事訴訟により他の相続人が処分された財産を回復することは制度上困難でした。そのため、遺産分割の対象となる全体の財産額は減少するのに対し、特別受益のある相続人は特別受益に加えて処分した財産も利得できるという不公平な結果を生じることがありました。
今回、処分した者以外の相続人の同意があれば、処分された財産を遺産に組み戻すことができる規定が新設されたことにより、処分された財産を遺産分割の対象に含められるようになりました。
3. 遺留分制度の見直し
改正前相続法では、遺留分減殺請求権を行使した場合、相続財産を共有することになり、事業承継の支障になってしまう場合がありました。また、遺留分減殺請求権の行使によって生じる共有割合は、目的財産の評価額等を基準に決まるため、通常、分母・分子とも極めて大きな数字となり、持分権の処分に支障が出る恐れもありました。
改正相続法では、遺留分から生じる権利を金銭債権化することで、遺留分減殺請求権の行使による共有関係の発生を回避できるようになりました。これによって、遺贈や贈与の目的財産を受贈者等に与えたいという遺言者の意思を尊重できるようになりました。
4. その他の改正
以上の改正点に加え、改正前相続法では、これまで相続人以外の者は、被相続人の療養看護等を行った場合でも、その貢献に応じて相続財産の分配にあずかることはできませんでしたが、改正により、一定の要件のもとで相続人に対して金銭の支払いを請求できるようになりました。
また改正前は、相続させる旨の遺言等により承継された財産は登記なくして第三者に対抗できるとされていましたが、改正相続法により、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できなくなりました。これによって、遺言の有無やその内容を知り得ない相続債権者・債務者等の利益や、第三者の取引の安全を確保することができるようになりました。
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