• 法律
  • Vol.10

相続法の改正について(1)

2019年7月1日より改正相続法が施行されました。今回の改正は、民法改正の及ぼす社会的影響や、従来はなかった配偶者保護の観点からの、大幅な改正となっています。

関連法人:NTS総合弁護士法人

1. 法定利率の変更

①配偶者短期居住権・配偶者居住権の新設

従来の相続法は、配偶者が相続開始時に被相続人の建物に居住していた場合、原則として被相続人との間で使用貸借契約が成立していたと推認されましたが、第三者に居住建物が贈与されてしまった等の場合、使用貸借が推認されず、配偶者の居住権は保護されませんでした。

今回の改正では、配偶者が被相続人の建物に居住していた場合、被相続人の意思にかかわらず、遺産分割が終了するまでの間(または最低6ヵ月間)は配偶者の居住が保護されるようになりました(配偶者短期居住権)。また、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象に、終身又は一定期間、配偶者が建物を使用する権利が新設されました(配偶者居住権)。

②配偶者による預貯金の相続

従来、被相続人所有の建物を相続した場合、預貯金を相続することができず、「住む場所はあるが生活費が不足してしまう」というケースがありました。今回の改正では、建物を「配偶者居住権」と「負担付所有権」に分割して評価し、配偶者は配偶者居住権を、他の相続人が負担付所有権をそれぞれ相続することで、配偶者が配偶者居住権に加えて、預貯金も相続できるようになりました。
これにより、配偶者は住む場所と生活費のいずれも確保できるようになりました。

2. 契約責任説に従った担保責任の整理

①配偶者への贈与の計算方法の見直し

現行の制度では、夫婦間で贈与等を行った場合、原則として「遺産の先渡しを受けたもの」として取り扱われるため、配偶者が最終的に取得する財産額は、贈与等がなかった場合と同じ結果になり、被相続人が贈与等を行った趣旨が遺産分割に反映されませんでした。

今回の改正で、婚姻期間が20年以上である配偶者の一方が他方に対してその居住の用に供する建物またはその敷地(居住用不動産)を遺贈・贈与した場合、原則として、計算上、遺産の先渡し(特別受益)を受けたものとして取り扱わなくてもよいとされることとなりました(持戻し免除の意思表示推定規定)。
これにより、配偶者はより多くの相続財産を取得することができるようになり、贈与等の趣旨に沿った遺産の分割が可能となりました。

②遺産分割前の払戻し制度

これまでは、遺産分割が終了するまでの間、相続人単独では預貯金の払戻しはできないとされ、葬儀費用の支払いや相続債務の弁済等の資金需要がある場合でも、遺産分割が終了するまでの間、被相続人の預金の払戻しができませんでした。

この度の改正で、遺産分割前の払戻し制度が新設され、預貯金債権の一定割合は、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関において支払いを受けられるようになり、さらに、預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件が緩和されました。
これらの改正により、遺産分割の公平性を図りつつ、相続人の資金需要に対応できるようになりました。

その他の改正点については、次号に譲りたいと思います。

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