- 労務
- Vol.12
派遣労働者の同一労働同一賃金
(労働者派遣法改正)
令和2年4月1日より、働き方改革関連法として改正労働者派遣法が施行されます。企業の規模を問わず、施行日は令和2年4月1日です。今回の改正は、労働者派遣事業を行っている派遣元事業者のみならず、派遣先にも少なからず影響があります。派遣労働者を使用している企業においても、法改正の概要をおさえておくことが求められます。
関連法人:NTS総合社会保険労務士法人
1. 不合理な待遇差を解消するための規定の整備
派遣労働者が就業する場所は派遣先であるため、派遣労働者と派遣先で直接雇用されている労働者との均等待遇(差別的な取扱いをしない)、均衡待遇(不合理な待遇差を設けない)を実現することが基本的な考え方となります。
しかしながら、この場合、派遣先が変わるたびに賃金水準が変わることになり、派遣労働者の収入が不安定になります。また、賃金水準は一般的に大企業であるほど高く、小規模企業であるほど低い傾向にあるため、派遣先が大企業に偏ってしまうことも懸念されます。
そこで、派遣労働者の待遇については原則である派遣先均等・均衡方式と労使協定方式のいずれかを確保することが義務化されました。
●派遣先均等・均衡方式
派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を確保するために、派遣先から派遣元へ比較対象労働者の待遇情報を提供します。①職務内容、②職務内容および配置の変更の範囲が同じ場合は差別的取扱いが禁止されます。①・②が同じでない場合は、その違いに応じた待遇が求められます。
●労使協定方式
派遣元で一定の要件を満たした労使協定が締結され、その労使協定に基づいた待遇により、労働者派遣をすることになります。
労使協定に定める事項は以下のとおりです。
①協定の対象となる派遣労働者の範囲
②賃金決定方法(同種業務の一般労働者の平均的な賃金額以上で、職務の内容等が向上した場合には改善されるもの)
③職務の内容などを公正に評価して賃金を決定すること
④賃金以外の待遇決定方法(派遣元の通常の労働者との間で不合理な相違がないこと)
⑤段階的・体系的な教育訓練を実施すること
⑥労使協定の有効期間など
2. 派遣労働者の待遇に関する説明義務の強化
派遣労働者の雇入れ時、派遣時に明示・説明しなければならない事項に加え、派遣労働者の求めに応じた説明が義務化されました。
派遣労働者から求めがあった場合の説明事項は、派遣先均等・均衡方式においては、派遣労働者と比較対象労働者との間の待遇の相違の内容および理由などです。労使協定方式においては、派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上であることなどです。
3. 行政ADRの整備
行政ADRとは、2の説明に対して派遣労働者に不服がある場合に、裁判以外の方法により解決する手続です。この制度は、労働局長または調停委員が公平な第三者として紛争の当事者の間に立ち、両当事者の納得が得られるよう解決策を提示して紛争の解決を図ることを目的としたサービスです。派遣労働者が自身の待遇に疑問を持った場合でも、直ちに裁判で争うのではなく、行政ADRを利用して解決するという選択肢が増えることになります。
すべての皆様との双方向の「ありがとう」に向けて
あらゆる相談にワンストップで対応
法律、税務・会計、労務など、分野の垣根を越えた幅広いニーズに対応し、企業や個人を取り巻くあらゆる問題についてワンストップで対応したいと考えております。