• 法律
  • Vol.9

契約の成立について

「契約はいつ成立したか?」契約書があれば明確ですが、実際には契約書を交わしていない契約も多く、実務においては問題となる争点の一つです。判例・学説上、「意思表示が合致した時点」、すなわち「『申込み』と『承諾』の意思表示が合致した時点」とされていましたが、改正前民法には、この基本原則を明記する条文が存在しませんでした。今回の民法改正で「契約の成立と方式」が条文化され、それに合わせて隔地者間の契約も「到達主義」に統一されました。

関連法人:NTS総合弁護士法人

1. 契約の成立時期

改正後民法522条1項は、「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。」と規定されています。これは、従前の判例・学説を踏襲したようにも見えますが、以下の点で注意をする必要があります。

①契約は、「申込みの意思表示に対応する承諾の意思表示がなされた時点」で成立することが明記されました。これにより、②申込みの意思表示は、これに対して承諾の意思表示がなされれば即時に契約を成立させる程度に確定し、かつ成熟した内容を具備していなければならなければなりません。そして、③契約を成立させる程度に確定した内容を具備していない意思表示は、単に「申込みの誘因」に過ぎないことが明らかにされました。

申込みの誘因とは、例えば求人広告です。求人広告は契約の申込みではなく誘因であり、誘因の結果、働きたいと思った人が、応募(=申込み)をして、使用者側が採用(=承諾)をしたときに、はじめて労働契約(雇用契約)が成立するということです。

今後、契約が成立したか否かが争点になった場合、「契約の成立をした」と主張立証する当事者は、当事者が合意した内容が確定し成熟していることを主張立証しなければなりません。

2. 隔地者間の契約

相対での取引等の場合、「承諾の意思表示が相手に到達した時点」で成立したとされていました(これを「到達主義」といいます)。しかし、離れた場所にいる者同士(隔地者間)の契約の成立時期については、改正前民法526条1項では特別のルールが用意されていました。「承諾の通知を発した時」に成立するというものです(これを「発信主義」といいます)。

しかし、発信主義は一般的な感覚に合わず、現代の通信技術にも適合しないため、改正後民法では、この規定は削除されることになりました。その結果、契約を含めた意思表示の効力発生時期については、相手のいる場所の遠近に関わらず一般ルールを定めた民法97条が適用され、到達主義に統一されることとなりました。

なお、改正前民法526条が削除され、到達主義への統一化が図られた結果、「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」(電子契約法、電子消費者契約法)の「電子承諾通知」に関する規定(発信主義は電子承諾通知を発する場合には適用されない)も削除され、この法律の名称も「電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律」に変更されています。

  • Contact us  

すべての皆様との双方向の「ありがとう」に向けて

あらゆる相談にワンストップで対応

法律、税務・会計、労務など、分野の垣根を越えた幅広いニーズに対応し、企業や個人を取り巻くあらゆる問題についてワンストップで対応したいと考えております。

関連情報