- 法律
- Vol.8
民法改正における「請負人の担保責任」について
今回は、民法改正で大きく変更されることになった事項の一つである「請負」について説明します。
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1. 「請負」の変更点
2020年4月1日に施行される民法改正で、請負については、以下の3点が大きく変更されました。
- ①
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仕事完成前の報酬請求権が明文化された。
-
②
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担保責任を契約責任に従った構成で整理した。
- ③
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注文者に破産手続が開始された場合の解除権が明文化された
①③については、従前の判例学説に従った改正がなされたため、実務に与える影響は大きくないとされています。これに対して、②については、従来の凡例法理とは異なる改正がされているものもあり、今回は特に②についてお話ししたいと思います。
2. 契約責任説に従った担保責任の整理
「担保責任」について、裁判所は、これまで「法定責任説」の立場に立って判断をする一方、学説では「契約責任説」が有力でした。民法改正では、担保責任全般が法定契約責任説に従って整理されることとなり、契約の目的物が契約内容に適合していない場合の責任が「債務不履行責任」として規律されることとなりました。そのため、担保責任という概念自体を債務不履行責任と区別する特別の意味合いはなくなったとされています。
具体的には、改正前の民法634条から640条の請負人の担保責任の規定は、本改正により、担保責任を制限する636条(注文者に帰責事由がある場合の注文者の履行請求権を制限するもの)と注文者の権利の期間制限を規定する637条(除斥期間を1年とするもの)のみが維持され、その他の規定はすべて削除されることとなりました。
3. 仕事の目的物が契約に適合しない場合の対応
そのため、例えば、仕事の目的物が契約に適合しない場合の修補請求権等及び契約の解除(改正前635条)については、無催告解除(改正後542条)に留まらず、催告解除も認められることとなり(改正後541条)、注文者が相当期間を定めて履行を催告し、請負人がその期間内に履行しないときは、債務の不履行が当該契約及び取引の通念に照らして軽微でない限り、契約の目的が達成できる場合であっても催告解除が認められることとなりました。また、改正前では仕事の目的物が土地工作物の場合に解除権が制限されていましたが、他の目的物と同様に、契約の内容に適合しない場合、一般原則による解除が認められるようになりました。
また、仕事の目的物である土地工作物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任の存続期間(改正前638条)についても、注文者は、仕事の目的物について契約内容不適合の事実を知った時から1年以内にそれを通知すれば、追完請求権、報酬減額請求権等の契約内容不適合を理由とする権利を一般の消滅時効の期間内であれば行使することができるようになりました。なお、その他の改正事項もありますが、紙幅の都合上、割愛いたします。
これまで使っていた契約書も、民法の改正に伴い、見直してみてはいかがでしょうか?
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