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  • Vol.7

ハマキョウレックス事件について

※労働契約法20条とは……有期雇用者と無期雇用者の均衡待遇について規定した条文で、同じ使用者の下で雇用されている、有期と無期の労働者に相違がある場合は
① 業務の内容・責任の程度(取扱対象・範囲/責任の程度・権限・役割の範囲)
② 職務内容・配置の変更の範囲(職務限定・転勤・昇進・出向等)
③ その他の事情
を見て差が不合理ではいけない。と規定されています。

関連法人:NTS総合社会保険労務士法人

ハマキョウレックス事件とは、平成30年6月1日、東証一部上場の自動車運送事業会社において、トラック運転手の契約社員(雇用契約の期間の定めがある)が正社員との間に賃金の差があることについて労働契約法20条に違反するとして争った事案です。今回は、正社員と契約社員の待遇格差の注意点についてお伝えします。

1. 事件概要と示された判断

最高裁は、有期契約社員のトラック運転手は無期の正社員と比較して
① 業務内容・責任は同一
② 配置の変更は無期雇用者は相違(全国規模の転勤の有無・将来の企業の中核を担う人事制度の適用等)
と結論づけ、有期契約社員と無期正社員に支給されている各種手当をその性質ごとに精査し、契約社員への不支給が違反か否かを以下のように判断。

無事故手当(月1万円) 違反 職務の性格上、無事故推奨に差はない
作業手当(月1万円) 違反 荷の積み下ろしに、差はない
給食手当(月3.5千円) 違反 給食の補助の目的に雇用形態の差はない
住宅手当(月2万円) 違反しない 転勤の有無により住宅コストの差はある
通勤手当 違反 通勤費に差があることに合理性はない
皆勤手当(月1万円) 違反 皆勤推奨に差はない
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2. 最高裁判決の意義

就業規則や賃金規定を重視するとともに、各手当の意味合い・位置づけを丹念に精査した判決となっており、同一労働同一賃金(同じ職務・業務は同じ賃金)という判定ではなく不合理か否かを判定するものといえる。加えて労働契約法第20条違反であっても契約社員の条件がそのまま正社員と同一となるものでなく、特に基本給や賞与についての差については裁判ではなかなか判断しづらい点があるため、今後の人事・給与制度制定及び規程改定の際に注意が必要と考えられる。

3. 実務上の対応について

①雇用形態ごとに適用される就業規則を個別に定める
⇒契約社員の適用の根拠を明確にして、正社員と同様でないことを明確にする。

②雇用形態ごとの職務内容・責任・変更範囲などの区分の明確化
⇒それぞれに求められる役割を明記し、職制規程などで上下関係などを明確にする。
また契約社員には昇進・昇格がないことを明記する。

③人事評価項目の明文化
⇒正社員・契約社員ごとにその位置づけに沿った評価項目とし、特に正社員には企業の中核を担う役割としての人材開発・部下の指導育成等の組織への貢献を評価とする。

④諸手当の見直し
⇒特に通勤手当についてはすぐに見直しをし、手当の意味合いを細かく説明する。

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