- 法律
- Vol.5
民法改正:事業に係る債務についての保証契約の特則
民法改正で大幅改正される「保証」、特に事業に係る債務についての保証契約の特則を解説します。金融機関の事業者向け融資では、第三者保証を徴求するケースは減少していますが、今回の改正では、金融機関以外からの事業者向け融資についても第三者保証を制限して保証人保護を図っています。
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1. 個人保証の制限
改正により、一定の債務に係る個人保証契約については、原則として公正証書の作成を要求され、これに反する契約は無効とされました。事業者向け融資の保証契約についても同様です。契約締結前に公正証書によって保証債務を履行する意思が表示されていなければ無効とされます。これは,中小零細事業者の「保証被害」の発生の未然防止と個人保証の経済的有用性の活用の調整を図ったものです。
2. 規制の対象となる保証契約の範囲
規制対象は、「事業のために負担した貸金等債務とする保証契約」と「主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約」に限られます。また、保証人保護は、個人の保証人を想定しており、法人が保証人となる場合は規制の対象外です。「事業」とは、一定の目的をもってされる同種の行為の反復継続的遂行を意味し、営利の要素は不要です。また、「事業のために負担した債務」とは、事業の用に供するために負担した債務を意味します。
3. 「事業のために負担する…根保証契約」の意義
継続的な売買契約に基づく代金債務や不動産賃貸借に係る賃借人の賃料債務等、専ら貸金等債務以外を主債務とする根保証契約は、規律の対象外です。その一方で、主たる債務の範囲に「事業のために負担する貸金等債務」が含まれていれば、上記のような貸金等債務以外の債務をカバーするための根保証契約であっても規制対象となります。
4. 例外としての経営者等保証
事業者向け融資に対する個人保証であっても、経営者による保証といえる場合は,規制の対象外となります。経営者は、当該事業資金に対して保証という形で責任を負うことで経営の規律を維持することができるためです。「役員保証」、「支配株主等による保証」、「共同事業者等による保証」の3つが経営者等保証に当たります。
5. 公正証書の作成
公正証書の作成時期には注意が必要です。①保証契約の締結に先立ち、②保証契約の締結の日前1か月以内に、作成されている必要があります。①②の要件を満たさない場合,保証契約の締結や公正証書の作成をやり直す必要が生じます。
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