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  • Vol.3

民法改正について

平成29年5月に、民法の改正法案が成立し、6月に公布されました。改正法案は公布から3年以内(平成32年)に施行されることとなっています。民法制定以来約120年ぶりの抜本的な改正とされ、改正項目は約200項目に及びます。今回は消滅時効の改正点についてご紹介します。

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1. 債権の消滅時効の起算点と時効期間

本改正により、債権の消滅時効の起算点と時効期間について、「権利を行使することができる時」という客観的起算点から10年(改正民法(以下、同じ)166条2号)、または「権利を行使することができることを知った時」という主観的起算点から5年(同条1号)とされ、1号または2号のいずれかの期間が到達することにより時効が完成するものとされました。これに伴い、商事時効の規定及び改正前民法170条から174条までの職業別の短期時効制度はすべて廃止されることとなります。

契約に基づく債権は、当該契約締結時に、債権者が「権利を行使することができることを知った時」となるのが通常であるため、本条1号が適用されることになり、契約に基づかない不当利得返還請求権や安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権等の債権は、1号または2号のいずれかの期間が到達することにより時効が完成します。

このほか、定期金債権の消滅時効(168条)、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(724条)、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効(167条)、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(724条の2)、確定判決で確定した権利の消滅時効(169条)は別に時効期間等が設けられています。

2. 時効の完成猶予及び更新

改正前民法では、時効の進行や完成を妨げる事由として、時効の「中断」及び「停止」の2類型が定められていましたが、複雑で分かりにくい等の理由から適切な用語に改める必要性が指摘されていました。

そのため本改正では、「中断」及び「停止」の概念を廃止して、それに代わり「更新」と「完成猶予」という概念がそれぞれ用いられることとなりました。
それぞれ148条以降で規定されていますが、このなかで新たに「協議を行う旨の合意による時効の完成猶予」(151条)が新設されましたのでご紹介します。

改正前民法では、当事者間の権利についての協議の合意がされた場合でも、時効の完成を阻止する方法について規定がなく、当事者間において解決に向けた協議をしている場合でも、時効の完成が近づけば、時効中断の措置として訴訟提起等をせざるを得ない場合がありました。

そのため、当事者間の権利についての協議の合意が「書面」でされたときは、時効の完成が猶予されることとされ、猶予される期間は、協議の合意があった時から1年(本条1項1号)、1年未満の協議期間を当事者が定めたときはその期間(同効2号)、または協議の続行を拒絶する旨の書面による通知をしたときから6か月(同項3号)のいずれかが経過するまでの間とされました。本規定は、訴訟提起等を回避しつつ、和解的解決を図ることを目的に広く活用されることが期待されています。

3. 経過措置

時効期間については、施行日前に債権が生じた場合には従前の例が適用され、施行日以降に発生した債権には改正法が適用されます(附則10条4項)。なお、「施行日前に債権が生じた場合」には、「施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされた時を含む。」(同条1項)とされているため、例えば、施行日前に請負契約が締結され、施行日以降に業務の完成に伴い報酬請求権が発生した場合には、従前の例となります。その他、事項の中断事由や事項の停止事由、生命・身体侵害事由の場合の特則、時効の援用等についても、経過措置が設けられているので、これらについても、改正民法が適用されるのか、改正前民法が適用されるのか注意が必要となります。

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