- 会計・税務
- Vol.5
平成30年度税制改正 事業承継税制の特例
平成30年3月28日に、税制改正法が成立しました。その中で、事業承継税制の特例についてご紹介します。
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事業承継税制とは、中小企業経営者の次世代経営者への引継を支援する税制です。後継者が先代経営者から株式の贈与を受けた場合の贈与税、あるいは先代経営者が亡くなって後継者が株式を相続した場合の相続税のうち、一定の金額について、納税を猶予する、つまり待ってくれるというものです。そして、一定の要件を満たすと猶予されていた税額が免除されます。
この制度について、今後5年以内に「特例承継計画」を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象として、次のような特例措置が創設されました。
項目 | 従来 | 特例 | |
---|---|---|---|
1 | 納税猶予の対象になる株式数 | 発行済株式総数の3分の2が上限 | 上限なし。全株式が適用対象 |
2 | 納税猶予割合(相続税) | 80%(贈与税は従来から100%) | 100% |
3 | 雇用要件 | 承継後、5年間平均で雇用の8割を維持できなけれ ば納税猶予を打ち切り、納税となる |
5年間平均で8割以上の雇用要件を未達成の場合でも、猶予を 継続可能とする |
4 | 対象者 | 1人の先代経営者から1人の後継者へ贈与・相続さ れる場合のみが納税猶予の対象 |
親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人) への承継も対象とする |
5 | 後継者が自主廃業や株の売却 を行う場合 |
承継時の株価を基に計算した贈与税・相続税の納 税猶予額を納税 |
経営環境が悪化している場合は売却額や廃業時の評価額を基に 納税額を再計算し、承継時に計算した納税額との差額を減免 |
上記1・2により、事業承継についての贈与税・相続税の負担がゼロとなります。
3は、これまで事業承継税制の制度を利用することを躊躇する要因になっていた、雇用要件を実質的に撤廃するものです。
4は、中小企業経営の実情に合わせた、多様な事業承継を支援するものです。
5は、経営環境の変化による将来の不安を軽減するものです。
今回の特例制度は、従来の事業承継税制を原則的な制度として残した上で、平成30年から平成39年までの10年間限定の特例として設けられたものです。
特例制度の適用を受けるには、平成35年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります。「特例承継計画」を提出しない場合は、従来の事業承継税制に従うこととなります。
従来・特例ともに、適用後5年間は毎年、都道府県庁へ「年次報告書」を提出し、税務署へ「継続届出書」を提出します。6年目以降は3年に1回税務署へ「継続届出書」を提出することになります。
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